「仕 事 の 哲 学Ⅱ・・」(805号)

昨日は久しぶりに装置の改造を行う現地工事に行ってまいりました。装置のメイン部分

を2ユニット⇒4ユニットに改造し、それに伴う用力部分にも改造が必要でした。当初は

1泊2日のスケジュールを組んでいましたが、真空のプロフェッショナルに同行してもらい

3名で作業を行い、用力(水)の漏れも無く。

真空時のリークも無く約1時間で到達圧力に。通電して放電確認も問題なし、4ユニット

同時放電も異常放電なし。パーフェクトな工事で夕方には全て完了。無事にその日のうち

に帰社出来ました。久しぶりに図面を書いたり、物を手配したり、組立作業⇒取付まで行い

この仕事の面白さと喜び達成感を、改めて感じることが出来ました。私達技術者の考え方

として、先日ご紹介したキャノン電子の酒巻社長の書籍「仕事の哲学」から「一日中仕事

のことを考える」という話をご紹介致します。

―――「君たちは一日二〇時間働きなさい」。これは私かキヤノンに入社した当時、創業者

の御手洗毅社長に言われた言葉です。医師でもあった御手洗社長は、社員の健康にとても気

を遣っていました。当時キヤノンにはGHQ運動というものがありました。これは

「Go Home Quickly」を略したもので、つまり「早く家に帰れ」です。ところ

が私たち開発部門の人間には「君たちは残りなさい。一日二〇時間働きなさい」と言ったの

です。これは「会社で二〇時間働け」という話ではありません。開発や設計、研究の人間は

考えることが仕事です。会社で働いているときはもちろん、通勤途中や家でくつろいでいる

とき、寝ているときでも仕事のことを考えろ、と言われたわけです。考えないのは、せいぜい

深い眠りにつく四時間、要は二四時間つねに頭の中に仕事のことを置いておけ、ということ

です。さもなくば、誰もが考えつかないような閃きは生まれません。いまの日本社会では、

二四時間働くのではなく、「集中して働くことで生産性が高まる」という考え方が主流ですが、

そこは仕事による違いもあります。肝心なのは成果が上がるかどうかで、午後六時になったら

考えるのをやめて、まったく仕事から離れてしまうというやり方は、少なくとも閃きを必要と

する仕事には向きません。「こうしたらどうだろう」「このやり方は無理だろうか」などと

自分の仕事を頭の中心に置き、それを一時も忘れない。そんな日々を送っていると、あるとき

ふっと一番よい考えが浮かんでくることを皆さん体験したことがあるのでは無いでしょうか。

酒巻社長は、通勤電車の中でも、帰りは反省の時間、行きは準備の時間と決めていました。

実験に失敗したときには、なぜ失敗したのか、理由を考え続けました。入社当時の通勤時間は

片道一時間以上ありましたが、原因の究明やその対策に没頭するあまり、乗り過ごすこともしば

しばでした。行きは行きで昨日の反省を踏まえながら、その日の作業の進め方などを考えました。

前日、帰りの電車でいいアイデアが浮かんだときは、早起きしてふだんより早い電車で通勤し、

電車の中で「あれをこうして……」などと、何度も頭の中でシミュレーションしました。わくわく

する気持ちを抱えて、会社の研究室に向かったものです。ただし、それがうまく行くことは稀で、

帰りの電車ではまた反省する、そんな毎日を繰り返すのです。家でも妻の不興を買わないよう、

ある程度は妻の話を聞きますが、それ以外は、風呂場でも本を読むなど、やはり仕事のことを考

えていました。いい仕事をしようと思えば、これは当たり前の話です。目の前にある情報に気づ

かず見逃す人が大勢いますが、それは常時仕事のことを考えていないからです。考えていれば

新聞を読んだとき、本を読んだとき、テレビを見ていても、ふとしたときにアイデアが浮かびます。

ヒントはどこにでも落ちているものです。昨今、働き方改革の一環で「ノー残業デー」が推奨

されています。私は逆に、残業を何時間でもしていい「フリー残業デー」を作ってはどうかと

提案しています。例えば水曜日は定時に帰るのではなく、好きなだけ仕事をするのです。私自身、

開発部門にいた頃は毎晩、一〇時二〇分に会社の最寄り駅を出る終電で帰っていました。家に帰っ

て寝るのは夜中で、翌朝は五時に起きて会社に向かっていました。時代が「働かなくていい」

方向に向かう中、そんな日が週に一度あってもいいのではないでしょうか ――――。

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 「技術をデザインする」  マルチエンジニアリングのAZA