「私の原点・・」(748号)

会社のデスクに飾っている写真があります。今日は今から31年前に1人で初めて

設計した装置をご紹介をしたいと思います。(^^)/

貴金属ではトップメーカーであるTN貴金属工業様の研究員様からのご依頼で、バッチ式

スパッタ装置を設計しました。1人で設計し、組立も行いました。経験も技術もまだまだ

不足している23歳。設計にも苦労して連日深夜残業。ようやく発注にこぎつけたのが

年末でした。部品や購入品が納入され1月の終わりから組立を開始。初号機でしたので

組立も私が行いました。組立てて行く段階で、多数の不具合発生!取り付ける穴が空い

ていない。大きくて相手側にはまらない。干渉してとりつかないなどなど・・。時には

加工課の方が変えられた後に、旋盤やフライスボール盤などで追加工を・・。加工機も

使い方をあまり知らないので、恐る恐る見様見真似で加工するんです。そのうち納期まで

の日程が厳しくなってきて・・。1ヶ月のうち1週間は徹夜でした。寒い2月です。

大きな工場に小さな石油ストーブの前でエアーパック(ぷちぷちです)に包まってミノム

シみたいに仮眠をとっていました。ようやく組立ても形になり、真空引きを行いリーク

チェックを・・。ところが明らかに漏れている「シューーーー」との異音。調べてわかった

んです。チャンバー(真空容器)の大気側(外側)と真空側(内側)にタップ穴が貫通し

合っているんです。絶望でした。溶接担当を呼んできて、貫通している穴をアーク溶接で

埋めてもらったんです。お客様には内緒っ(^_^;) そんなこんなで小さくて、かっこは良

くないですが1台のスパッタ装置を無事に出荷することが出来ました。会社で評価されたことは

1つのことを成し遂げる執念でした。写真は出荷当日、装置と共に誇らしげに・・。

無事に工場に納入し終え、車での帰り道の途中、自販機の前に車を止めて営業の課長がビールを

買ってくれました。「飲めっ」って・・。

納入後もエピソード沢山ありますが、お客様にも喜んで頂き、その後沢山の実験や評価に使って

頂きました。これが私の仕事での原点になっています。この年の10月に弊社を設立。

この写真を机の脇に飾って、いつも原点を確認しています。皆さんにも仕事に限らず、

様々な原点ありませんか?苦難に直面した時に原点に立ち帰ること必要ですね。

装置の仕様は以下の通りです。

【装置仕様】

・装置名:RVS-630Bスパッタ装置(多層膜仕様)

・ステンレス真空チャンバー(660x660x260mm)

・Φ500回転基板ホルダー(2~30rpmに可変コントロール式)

真空シールは磁性流体を使用し、RF電圧仕様

・スパッタチャンバー蓋はエアーシリンダーをリフトとして上下開閉700mm

 ロングストロークのエアーシリンダーが会社の在庫で余っていたものを使用

・Φ6“マグネトロンカソード3基(T/S170)

・Φ520回転式シャッター機構

・Φ120ビューイングポート

※排気系はお客様の手持ちの排気ユニットを使用

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