― 加熱しないのに高真空が測れる?「冷陰極電離真空計」の仕組み ―
前回は、フィラメントを加熱して電子を発生させる「熱陰極電離真空計」を紹介しました。
今回は、フィラメントを加熱せずに高真空を測定できる「冷陰極電離真空計」について解説します。
同じ電離真空計でも、電子の発生方法が大きく異なります。
■ 加熱しないのに、どうやって測る?
冷陰極電離真空計は、高い電圧と磁石の力を利用して、気体分子をイオン化する真空計です。
代表的な方式に「ペニング型」があります。
内部には電極と磁石があり、高い電圧をかけることで、わずかに存在する電子を加速させます。
さらに磁石の力で電子の進む方向を曲げ、装置内部を長い距離移動させます。
その電子が気体分子に衝突すると、分子がイオン化されます。
こうして発生する放電電流を利用して圧力を求めるのです。

■ なぜ磁石が必要なの?
高真空では、気体分子の数が非常に少なくなっています。
電子がまっすぐ進むだけでは、気体分子に衝突する機会が少なくなります。
そこで磁石を使い、電子を曲がった軌道で運動させます。
電子が移動する距離を長くすることで、気体分子と衝突する機会を増やしているのです。
■ 熱陰極型との違いは?
熱陰極型は、フィラメントを加熱して電子を発生させます。
一方、冷陰極型はフィラメントを加熱する必要がありません。
そのため、フィラメントの焼損を心配する必要がなく、構造も比較的丈夫という特徴があります。
ただし、測定を開始する際に放電が始まるまで時間がかかったり、汚れによって測定値が不安定になったりすることがあります。
■ どんな装置で使われる?
冷陰極電離真空計は、半導体製造装置、真空成膜装置、研究用の真空設備などで利用されています。特に、フィラメントの加熱を避けたい装置や、長期間の真空監視が必要な設備に適しています。
■ まとめ
冷陰極電離真空計は、「高電圧と磁石を利用する」→「電子を長く移動させる」→「気体分子をイオン化する」→「放電電流から圧力を求める」という仕組みです。
熱陰極型と冷陰極型。電子の発生方法は異なりますが、気体をイオン化して圧力を測るという基本原理は共通しています。
■ 次回予告
次回Vol.44では、「真空計はどこに取り付ける?測定位置によって圧力が変わる理由」について、真空装置の設計で知っておきたい基本を分かりやすく解説します。