【真空装置パーツ解説シリーズ Vol.41】真空計③電離真空計(2099号)

― 高真空を測る「電離真空計」とは? ―
前回は、気体による「熱の運ばれ方」を利用して圧力を測るピラニ真空計を紹介しました。では、さらに圧力が下がり、気体分子が極端に少なくなったら、どうやって真空度を測るのでしょうか。そこで活躍するのが、「電離真空計」です。

■ 見えない気体分子を「イオン」にする

電離真空計の基本原理は、残っている気体分子をイオン化して、その量から圧力を求めることです。
代表的な熱陰極電離真空計では、加熱したフィラメントから電子を放出します。この電子を電界によって加速し、気体分子に衝突させます。
すると気体分子から電子がはじき出され、プラスの電荷を持つ「正イオン」ができます。
この正イオンを集めて微小なイオン電流として測定します。一定の条件では、気体分子が多いほど発生するイオンも多くなるため、イオン電流から圧力を求めることができます。

■ なぜ高真空を測れるの?

高真空では気体分子が非常に少ないため、前回紹介したピラニ真空計のように、気体による熱輸送の変化を利用した測定が難しくなります。
電離真空計は、わずかに残った気体分子そのものをイオン化して検出するため、高真空領域の測定に適しています。
半導体製造装置や真空成膜装置、分析装置など、高い真空度が必要な設備で広く使われています。

■ ガスの種類によって感度が違う

ここで注意したいのが、電離真空計にも「ガス種依存性」があることです。
気体によって電子が衝突したときのイオン化のされやすさが異なるため、同じ圧力でもイオン電流は同じとは限りません。
そのため、窒素などを基準として校正された真空計で別のガスを測定する場合は、必要に応じて感度係数(ガス補正係数)を考慮します。

■ まとめ

電離真空計のポイントは、
「電子を気体分子に衝突させる」 →「気体分子をイオン化する」 →「イオン電流を測る」 →「圧力に換算する」
という流れです。目には見えないほど少なくなった気体分子を、電気信号として捉える――これが電離真空計の基本的な仕組みです。

■ 次回予告

次回Vol.42では、電離真空計の代表的な方式である「熱陰極電離真空計」について、フィラメント・グリッド・イオンコレクタの役割と構造を、さらに詳しく解説します。