【真空装置パーツ解説シリーズ Vol.39】真空計①真空度によって測り方が違う(2081号)

― なぜ真空度によって測り方が違うのか? ―
真空装置を扱ううえで欠かせないのが「真空計」です。
真空計はチャンバー内部の圧力を測る計器ですが、大気圧から高真空・超高真空までを、1種類の真空計だけで正確に測ることはできません。
なぜなら、圧力が下がるにつれて気体分子の数が減り、利用できる物理現象が変化するからです。

■ 真空になると何が変わる?

大気中では、多くの気体分子が飛び回り、互いに衝突しています。
真空ポンプで排気すると分子数が減少し、分子が次の分子と衝突するまでに進む平均距離、つまり「平均自由行程」が長くなります。
そのため真空計も、圧力領域に適した測定原理を使い分けます。

■ 「圧力そのもの」を測る

比較的圧力が高い領域では、気体が膜を押す力を利用できます。
代表例が隔膜(ダイヤフラム)真空計です。圧力による薄い膜の変形を検出して圧力を求めます。気体の圧力そのものを測るため、ガスの種類による影響を受けにくいのが特徴です。

■ 「熱の伝わり方」を利用する

圧力が低くなると、気体分子による熱の運ばれ方が圧力によって変化します。
代表的なのがピラニ真空計です。加熱した細線から気体へ逃げる熱量の変化を検出し、圧力に換算します。ただし、気体によって熱輸送特性が異なるため、ガスの種類によって表示値が変化します。

■ 高真空では「イオン」を利用する

さらに圧力が低くなると、気体分子は非常に少なくなります。
そこで利用されるのが電離真空計です。気体分子を電子などによってイオン化し、発生するイオン電流から圧力を求めます。

■ 実際の装置では組み合わせて測る

重要なのは、真空計の測定範囲には重なりがあり、明確な境界があるわけではないということです。
半導体製造装置や真空成膜装置では、粗引きから高真空まで圧力が何桁も変化するため、ピラニ真空計と電離真空計など、複数の真空計を組み合わせて使用します。

■ まとめ

真空計の測定方法が一つではないのは、圧力によって気体分子の振る舞いが変わるからです。
「膜の変形」「熱の伝わり方」「気体の電離」など、それぞれの領域に適した物理現象を利用して真空度を測定しています。

■ 次回予告

次回Vol.40では、真空装置で広く使われる「ピラニ真空計」の構造と測定原理、そしてなぜガスの種類によって表示値が変わるのかを解説します。