【真空装置パーツ解説シリーズ Vol.37】真空ポンプ⑦イオンポンプ(2071号)

イオンポンプ(スパッタイオンポンプ) ― 電気の力で超高真空をつくるポンプ ―
これまでターボ分子ポンプやクライオポンプなどをご紹介してきましたが、さらに超高真空・極高真空の維持を得意とするのがイオンポンプ(スパッタイオンポンプ)です。電子顕微鏡や表面分析装置、粒子加速器など、極めてクリーンな真空環境が必要な設備で使用されています。
イオンポンプ最大の特徴は、ガスを外へ排出するのではなく、ポンプ内部に捕まえることです。
内部では強い電界と磁界によって電子を運動させ、残留しているガス分子を電離してプラスイオンにします。そのイオンをチタン製の陰極(カソード)へ高速で衝突させると、チタン原子が飛び出すスパッタ現象が発生します。
飛び出したチタンは内部表面に新しいゲッター膜を形成し、酸素や窒素などの活性ガスを化学的に捕捉します。一方、一部のガスはイオンとして陰極内部などに取り込まれます。こうして気体分子を真空空間から取り除き、超高真空を維持するのです。


イオンポンプはオイルを一切使用せず、回転部もありません。そのため、油による汚染がなく、振動も非常に少ないことが大きなメリットです。また、運転に必要なのは基本的に電力だけで、長期間にわたる真空保持にも適しています。
ただし、大気圧から直接真空を作るポンプではありません。あらかじめ別の真空ポンプで十分に排気した後、超高真空領域を作り、維持するために使用します。

まとめ

イオンポンプは、「排気する」というより「ガス分子を捕まえて閉じ込める」真空ポンプです。半導体製造装置で広く使われるターボ分子ポンプとは役割が異なりますが、電子顕微鏡、表面分析、加速器など、クリーンで安定した超高真空が求められる世界では欠かせない技術です。

次回予告

次回は「Vol.38 真空ポンプ総集編 ― 用途でわかる真空ポンプの選び方」として、ロータリーポンプからイオンポンプまで、それぞれの役割と使用圧力領域を一枚の図とともに整理します。