【技術コラム Vol.19】― 酸化膜・窒化膜を形成する技術 ―これまでのコラムでは、DCスパッタ、RFスパッタ、マグネトロンスパッタ、バイアススパッタについて解説してきました。今回は、スパッタシリーズ最終回として半導体製造において重要な 反応性スパッタ について解説します。
■ 反応性スパッタとは:反応性スパッタとは、スパッタ中に反応性ガスを導入し、ターゲット材料と化学反応させて薄膜を形成する技術です。通常のスパッタでは、ターゲット材料そのものが基板に堆積します。一方、反応性スパッタでは
・酸素(O₂)・窒素(N₂)・メタン(CH₄)・アンモニア(NH₃)
などの反応性ガスを導入します。これにより、飛び出した金属原子が反応ガスと結合し、酸化膜や窒化膜などの化合物膜が形成されます。なお、この反応は
・ターゲット表面・プラズマ中・基板表面
の複数の場所で同時に発生します。特にターゲット表面の反応は、プロセス安定性に大きく影響します。
■ 代表的な成膜例:反応性スパッタでは、以下のような膜が形成されます。
・TiN(チタン窒化膜)・SiN(シリコン窒化膜)・SiO₂(酸化膜)・Al₂O₃(酸化アルミ膜)
これらは半導体デバイスに欠かせない材料であり、バリア膜や絶縁膜などに広く使用されています。
■ なぜ反応性スパッタが必要なのか:酸化膜や窒化膜のターゲットも存在しますが、成膜速度やコスト、膜質制御の観点から、反応性スパッタが採用されるケースが多くあります。また反応性スパッタを用いることで
・膜組成の制御・均一な膜形成・量産性の向上
が可能になります。そのため、量産用半導体装置では広く採用されています。
■ 技術的なポイント(ターゲットポイズニング):反応性スパッタでは、ガス流量の制御が非常に重要です。反応性ガスが多すぎると、ターゲット表面に化合物層が形成されます。この現象は ターゲットポイズニング と呼ばれます。ポイズニングが発生すると
・スパッタ率の低下・プラズマ不安定化・成膜速度低下
などの問題が発生します。逆にガス量が少なすぎると、十分な化合物膜が形成されません。
そのため、反応性ガス流量の最適制御が重要になります。反応性スパッタでは、ターゲット表面の状態がプロセス安定性を左右します。
■まとめ(最終回):反応性スパッタは、酸化膜や窒化膜などの機能性膜を形成する重要な技術です。反応性ガスの制御やターゲット状態の管理といった細かな調整が、膜品質を大きく左右します。
半導体製造では、こうした目に見えない薄膜の品質がデバイス性能を支えています。まさに、精密な制御技術の積み重ねが半導体を生み出しているのです。
「半導体はこうして作られるシリーズ」は本号で最終回となります。多くの反響をいただき、ありがとうございました。
次回からは新シリーズ「真空装置パーツシリーズ」を開始します。どうぞお楽しみに。