半導体はこうして作られる④バイアススパッタ(1974号)

【技術コラム Vol.18】― 膜品質と密着性を向上させる技術 ― これまでのコラムでは、DCスパッタ、RFスパッタ、マグネトロンスパッタについて解説してきました。これらは主に「材料を飛ばして膜を作る」ための技術です。しかし、実際の半導体製造では、単に膜を形成するだけでは不十分です。
・膜の密着性・膜の緻密性・膜の結晶性など、膜の品質が非常に重要になります。そこで登場するのが バイアススパッタ です。
■ バイアススパッタとは:バイアススパッタとは、基板側に電圧(バイアス電圧)を印加しながら成膜するスパッタ方式です。通常のスパッタでは、ターゲットから飛び出した原子がそのまま基板に付着します。一方、バイアススパッタでは基板側に負電圧を印加することで、プラズマ中のイオンが基板表面に引き寄せられます。これにより、基板表面が軽くイオンで叩かれる状態になります。
■ なぜバイアスをかけるのか:基板にイオンが衝突することで、以下の効果が得られます。
・膜の密着性向上・膜の緻密化・不純物除去・結晶性向上
この効果は イオンアシスト効果 とも呼ばれます。つまり、膜を形成しながら同時に表面を整える技術です。
■ 膜品質が向上する理由:通常のスパッタでは、基板に到達した原子はランダムに堆積します。そのため膜内部に・空隙・粒界・不純物 が残ることがあります。しかしバイアススパッタでは、イオン衝突により原子の移動が促進されます。
その結果、・原子が密に並ぶ ・膜が緻密になる ・強固な膜になる という効果が得られます。
■ 主な用途:バイアススパッタは、膜品質が重要な場面で使用されます。
・バリアメタル・配線膜・絶縁膜・耐摩耗膜
特に半導体分野では、微細化が進むほど膜品質が重要になるため、この技術の重要性は高まっています。
■ 装置設計のポイント:バイアススパッタでは以下が重要になります。
・基板バイアス電源・基板冷却・プラズマ均一性・パーティクル対策
特にバイアスを強くしすぎると、・膜損傷・基板ダメージ が発生するため、最適条件の設定が必要になります。
■ マグネトロンスパッタとの組み合わせ:実際の装置では、・マグネトロンスパッタ・バイアススパッタを組み合わせることが一般的です。これにより・高成膜速度・高品質膜 の両方が実現されます。現在の半導体装置では、この方式が多く採用されています。
■ まとめ:バイアススパッタは、単に膜を作る技術ではなく、
膜の品質を向上させるための重要な技術です。
半導体の微細化・高性能化が進む現在、この技術の重要性はさらに高まっています。目に見えない薄膜の品質が、最終製品の性能を大きく左右しています。半導体は、こうした見えない技術の積み重ねによって作られています。
■ 次回予告:Vol.19「反応性スパッタ」― 酸化膜・窒化膜を形成する技術 ―