「半導体はこうして作られる③ マグネトロンスパッタ」(1969号)

【技術コラム Vol.17】今回は、現在のスパッタ装置の主流技術である 「マグネトロンスパッタ」 について解説します。
スパッタ技術はシンプルな原理ですが、成膜速度や安定性に課題がありました。その課題を大きく改善したのがマグネトロンスパッタです。現在の半導体装置や薄膜装置の多くがこの方式を採用しています。
■ マグネトロンスパッタとは:マグネトロンスパッタとは、ターゲット裏面に磁石(マグネット)を配置し、磁場を利用してプラズマ密度を高めるスパッタ方式です。
通常のスパッタでは、プラズマ中の電子はチャンバー内に拡散しやすく、プラズマ密度が低くなりがちです。しかしマグネトロンスパッタでは、磁場によって電子をターゲット表面付近に閉じ込めます。すると電子が長時間滞留し、アルゴンガスとの衝突が増加します。その結果、
・プラズマ密度の向上・イオン生成量の増加・スパッタ効率の向上
が実現されます。
■ なぜ成膜速度が上がるのか:マグネトロンスパッタでは電子が磁場によってターゲット表面を円状に移動します。この動きにより、
・電子の移動距離が長くなる・イオン化効率が向上する・ターゲットへのイオン衝突が増える
という効果が生まれます。つまり、同じ電力でも多くのイオンが生成され、成膜速度が大幅に向上します。さらに低圧でも安定したプラズマが生成できるため、膜品質の向上にもつながります。
■ マグネトロンスパッタの特徴:マグネトロンスパッタの主な特徴は以下の通りです。
・高い成膜速度・低圧で安定したプラズマ・低温成膜が可能・ターゲット利用効率の向上
これらのメリットにより、現在ではスパッタ装置の標準技術となっています。
■ 装置構成のポイント:マグネトロンスパッタでは、ターゲット裏面に配置される磁石構造が重要になります。一般的には
・中央:N極 ・外周:S極
またはその逆の構成が使われます。この磁場構造により、ターゲット表面にドーナツ状のプラズマが形成されます。
実際の装置では、この部分にターゲットの消耗痕(エロージョン)が現れます。これはマグネトロンスパッタ特有の現象です。
■ DC・RFとの関係:マグネトロンスパッタは単独の方式というより、
・DCマグネトロンスパッタ ・RFマグネトロンスパッタ
のように組み合わせて使用されるのが一般的です。つまり、マグネトロンは「プラズマ強化技術」と言えます。
■ 主な用途:マグネトロンスパッタは幅広い分野で使用されています。
・半導体配線膜・液晶ディスプレイ・光学薄膜・ハードディスク・太陽電池
現在の薄膜技術の多くは、この方式によって支えられています。
■ まとめ:マグネトロンスパッタは、スパッタ技術を実用レベルへ引き上げた重要な技術です。磁場を利用して電子を閉じ込めることで、成膜速度・安定性・膜品質を大幅に向上させました。現在の半導体製造装置において、マグネトロンスパッタは欠かせない基盤技術となっています。
■ 次回予告:Vol.18「バイアススパッタ」〜膜密着性を向上させる技術〜