技術コラム Vol.13「スパッタとは何か?」それは「材料を叩いて飛ばし、膜を作る。それがスパッタです。」
半導体製造装置にはさまざまな成膜技術がありますが、その中でも中心的な存在が スパッタ です。弊社が設計支援を行う半導体装置でも、非常に重要な技術の一つです。
今回から 「スパッタ装置設計シリーズ」 として、装置の仕組みや設計のポイントを分かりやすく解説していきます。なお、このテーマは以前の真空装置コラムでも触れていますが、本シリーズの導入として改めて整理します。
■ スパッタとは:スパッタとはプラズマのエネルギーで材料原子を叩き出し、基板に薄膜を形成する技術です。
真空チャンバー内でアルゴンなどのガスを用いてプラズマを発生させ、そのイオンがターゲット(金属など)に衝突します。その衝突エネルギーで材料原子が飛び出し、ウエハー表面に付着して薄膜になります。半導体製造では
・配線形成 ・バリアメタル ・電極膜 ・各種機能膜
などに使われ、現在の半導体デバイスには欠かせない技術です。
■ PVD(物理蒸着)の一つ:成膜技術は大きくCVD(化学反応) PVD(物理現象)
の2つに分かれます。スパッタはPVD(Physical Vapor Deposition) に分類される技術です。材料を化学反応で生成するのではなく、物理的に飛ばして膜を作る 点が特徴です。
■ 蒸着との違い:同じPVDには 蒸着 という方法もあります。
蒸着
・材料を加熱して蒸発させる
・装置構造が比較的シンプル
・直進性が高い
スパッタ
・イオン衝突で原子を飛ばす
・膜の密着性が高い
・均一な膜が作りやすい
現在の半導体製造ではスパッタが主流 となっています。
■ なぜ真空が必要なのか:スパッタ装置では真空環境が重要です。理由は次の3つです。
① 原子が途中で衝突しない ② 不純物混入を防ぐ ③ プラズマを安定させる
大気中では原子が空気分子と衝突し、均一な膜が形成できません。そのため装置は 宇宙空間に近い真空環境 を作る必要があります。半導体装置と宇宙開発が「真空」というキーワードでつながる理由もここにあります。
■ スパッタ装置の基本イメージ:基本構成は次の通りです。
・真空チャンバー
・ターゲット(材料)
・マグネット
・電源
・ガス導入系
・真空ポンプ
・基板搬送機構
シンプルに見えますが実際には
・プラズマ制御
・パーティクル対策
・温度管理
・メンテナンス性
など多くの設計ポイントがあります。
■ このシリーズについて:本コラムでは、スパッタ装置を設計者の視点 で解説していきます。
半導体の世界はとても小さな世界ですが、その技術が私たちの社会を大きく動かしています。