創業時のお話をさせてください。弊社アザエンジニアリングは、先月創業36年を迎えました。当時はまだ 「手書き図面」 の時代。大企業も同様で、設計現場は鉛筆とドラフター(製図板)が当たり前でした。月末になると、納品した図面をサイズごとに集計し、手書きで伝票を作って請求する。完全出来高制で、1枚の図面ごとに工数が決められていたのです。
■ 当時の「請求工数表」
| 図面サイズ | 工数 |
|---|---|
| A4 | 0.5H |
| A3 | 1.5H |
| A2 | 4H |
| A1 | 8H |
| 部品表 | 1H/1枚(組立図とセットで“ボーナス”扱い) |
組立図や装置フレーム、チャンバーなど複雑な図面を描いても、A1サイズでは 全く割に合わない こともしばしばでした。月に200時間働いても、成果がなければ請求は少なくなる。逆に、スキルがあれば200時間以上の請求もできる。実力がそのまま収入に反映される、非常に厳しい世界でした。私は創業当初、この「決められた工数で仕上げる」という壁をなかなか越えられず、タイム測定を繰り返しながら、100%請求できるレベルに達するまで1年以上の時間がかかりました。
■ CAD導入という転機
「この働き方を、何年も続けるのは不可能だ。」
そう考えた私は、当時まだ中小企業では珍しかった CAD導入 を決断しました。ワークステーション一式 800万円。当時の会社規模からすると、思い切った投資でした。しかし――導入 翌月 から状況は一変します。請求工数が、働いた工数の“ほぼ倍”にまで向上したのです。「ピンチこそチャンス」それをまさに体感した出来事でした。
■ 今の時代は「AI活用」が同じ転機になる
昔は“時短”と言えばスピードと根性でした。しかし今は違います。これからの設計の現場はAIを味方につけた人が圧倒的に強くなる時代です。社内の一部で現在AIの試用が始まりました。AZAの皆さんにも、ぜひ上記の「工数意識」を改めて持ちながら、設計時間の短縮=技術者としての価値向上という視点で、AI活用に挑戦してほしいと思います。
“技術が未来を変える”
この精神は、創業から36年経った今も変わりません。今週も、共に前進してまいりましょう。