「人は見たいものしか見ない?AIで気づく認知バイアス」(1869号)

先日、大塚商会さんのセミナーで印象的な話を聞きました。題して――「放射線技師の83%がゴリラを見逃した」。これは実験で、胸部レントゲン写真の中にゴリラのシルエットを仕込んだところ、熟練した放射線技師の8割以上が気づかなかったというものです。理由はシンプルです。彼らは「異常な影を探す」という目的で画像を見ていたため、“ゴリラ”という想定外の存在を認知できなかったのです。つまり、人間は「見たいものしか見ない」ということ。
🔹 技術者にこそ起こりやすい「専門家バイアス」
この話、私たち設計技術者にも当てはまります。長年の経験や成功体験があるほど、「こうあるはず」「このやり方が正しい」という思い込みが強くなり、新しい発想や方法を無意識に排除してしまうことがあります。これがいわゆる「専門家バイアス」「認知バイアス」です。問題なのは、自分ではそれに気づきにくいことです。
🔹 だからこそ、AI導入が意味を持つ
今、アザエンジニアリングではAIの導入プロジェクトを進めています。正直、「使いこなせるか不安」「自分の仕事がAIに奪われるのでは」「時期尚早」と感じる人もいるでしょう。しかし、今回のセミナーで改めて気づいたのは、AI導入とは単なる業務効率化ではなく、“認知バイアスを打ち破るための道具”でもあるということです。AIは人間の思い込みを持ちません。別の角度から意見を出し、見えていなかった視点を提示してくれます。つまり、AIを使うことで、私たちの「見えていなかった部分」を可視化できるのです。
🔹 「自分の常識を疑う」ことから始めよう
これからの時代、イノベーションは視点の転換から生まれます。AIを“脅威”ではなく“新しい鏡”として使うことで、自分の思考の癖や限界を見つめ直すことができます。技術者として、「自分は何を見逃しているか?」「AIは何を見つけてくれるのか?」この2つを意識するだけで、設計の質も、チームの創造力も確実に変わります。
🔹 最後に・・
セミナーの講師はこう締めくくっていました。 『多様な専門家の考えを統合し、新しい価値を生むには“道具=方法論”が必要です。』アザエンジニアリングにおけるAI導入こそが、その“道具”のひとつです。これをきっかけに、私たち一人ひとりが見えていなかった可能性を見に行くこと。それが、次の35年を切り開く第一歩だと思います。
🧩 今日のメッセージ
「AIは人間の代わりではなく、“見えないものを見せてくれるパートナー”である。」

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