私の住む街は山坂が多く、家を建てるにも少し高めの宅地造成が必要な地形です。
そんな地域には、あちこちに小高い石垣が見られます。今日は、そんな石垣にまつわるお話です。
戦国時代に築かれた安土城。織田信長が初めて総石垣造りで築いたとされ、それまでの城よりもはるかに高く石が積まれていました。それを可能にしたのが、石工職人集団「穴太衆(あのうしゅう)」です。
彼らは、一つとして同じ形のない石をそのまま積み上げる「野面積み(のづらづみ)」という手法を用い、国内に現存する城の石垣の7割以上に携わったとされています。先日は、安土城跡がある滋賀県近江八幡市の湖岸で、城下町のものとみられる石垣が新たに発見され、話題になりました。この穴太衆の技術を受け継ぎ、石垣の修復などを手がける建設会社が今も同県にあります。その会社の信条は「石の声を聴くこと」。すべての石には役割があり、無駄なものはひとつもない。そう考えると、どの石もぴったりと収まる場所が見つかるというのです。
この話はよく「人材育成」に例えられますが、私は私たちの「設計の仕事」にも通じるものがあると感じます。
私たちは、毎日変わる案件に取り組み、CADと格闘しながら難題を乗り越えています。過去の経験や学びを応用し、全く新しい手法を取り入れることもあります。
それはまさに、知恵と知識のイノベーション。一つひとつの組み合わせが、私たちの設計業務を支えています。
今日積む石(=設計)が、明日の私たちのスキルとなる。
そう思うと、設計という仕事には本当にロマンがありますね。
今日も、知識と知恵の石を積み上げていきましょう!