半導体装置を支える「搬送機構(トランスファー技術)」(1903号)

【技術コラム Vol.3】前回の技術コラムでは、半導体製造装置に欠かせない「真空技術の基礎」について解説しました。今回はその続きとして、真空環境下でウェハを正確かつ安全に移動させる搬送機構(トランスファー技術) に焦点を当てます。半導体装置の性能は、プロセス技術だけでなく「どう運ぶか」 によっても大きく左右されます。
■ 搬送機構の役割とは:半導体製造装置では、ウェハをロードロックからトランスファーチャンバーを経由し、各プロセスチャンバーへ、真空を維持したまま搬送する必要があります。そのため搬送機構には、
* 高い位置決め精度
* 繰り返し再現性
* 清浄度(低パーティクル)
* 長期安定性
が求められます。わずかなズレや異物発生が、歩留まり低下や装置停止につながります。
■ 真空搬送ならではの難しさ:真空中の搬送機構は、大気中とは異なる制約条件の中で設計されます。
* 潤滑油が使えない、または制限される
* 放熱しにくく、熱がこもりやすい
* 真空リークを起こせない
* パーティクル発生を極限まで抑える必要がある
構造・材質・駆動方式の選定が極めて重要です。
■ 代表的な搬送方式:現在の半導体装置で使われる主な方式は次の通りです。
● 多関節型真空ロボット:現在もっとも一般的な方式で、複数チャンバーへの柔軟なアクセスが可能です。
* 高い位置決め精度
* 複雑な動作制御
* レイアウトへの高い対応力
スパッタ装置をはじめ、多くの前工程装置で採用されています。
● スカラ型・直動型搬送機構:構造が比較的シンプルで、
* 高速搬送
* 高い再現性
* メンテナンス性の良さ
が特長です。装置構成が限定される場合に適しています。
■ ロボットがなかった時代の搬送設計:現在では真空搬送ロボットが一般的ですが、かつては搬送用ロボットそのものが存在しない時代 がありました。
アザエンジニアリングではその時代から、
* ロボットを使わない搬送機構の設計
* カム・リンク・直動機構による機械式搬送系
* 独自構造の搬送ロボット設計
を自社で手がけてきました。既製品ロボットを前提にしない設計を経験してきたことで、構造の本質や弱点を根本から理解 しています。この蓄積が、現在のロボット選定やトラブル対応力につながっています。
■ 搬送設計で重要なポイント:アザエンジニアリングが重視しているのは次の点です。
* 真空対応材料・ベアリングの選定
* パーティクル低減構造
* 熱膨張を考慮したクリアランス設計
* ウェハへの応力を抑えるハンド設計
* メンテナンス性・組立性の確保
「動く」だけでなく「使い続けられる」設計 が求められます。
■ 真空技術との一体設計:搬送機構は、真空技術と切り離して考えることはできません。
* 真空ポンプ構成
* チャンバー形状
* ガス流れ
* プラズマ影響
これらを総合的に捉え、最適な搬送方式を選定します。
■ アザエンジニアリングの強み:アザエンジニアリングは、
* 真空設計
* プロセス要求
* 搬送機構設計
を個別ではなく、装置全体として最適化 する設計を行ってきました。ロボットがなかった時代からの経験が、現在の高度化・複雑化した装置設計に活かされています。
■ 次回予告:次回の技術コラムでは、「ロードロック機構と真空切替技術」 を取り上げます。装置のスループットと安定稼働を支える重要な技術です。どうぞお楽しみに。

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